『南海の花束』

昭和17年5月、太平洋戦争直前に作られた「日本の南進政策」を鼓舞する航空映画。
監督の阿部豊は、ハリウッドで映画を修行してきた人間で、日活、松竹、東宝、戦後は新東宝、さらに制作再開した日活でアメリカ風の明るくメリハリのついた娯楽映画を多数作った。

ここでも、南海の島に赴任した支配人の大日向伝が、赤道を越えた南方空路を開拓する話をダイナミックに劇的に展開する。
大日本航空機(株)の協力で、この会社は一般機のほか飛行艇によりサイパン等への空路を持っていた。
映画の中でも出てくる飛行艇が飛行する海は、横浜の根岸湾だろう。
根岸駅近く、現在の新日本石油根岸製油所の辺りに、大日本航空機の飛行艇施設と離着陸用の指定水域があった。
円谷特撮は、昨日の『海軍爆撃隊』ほどではないが、飛行艇の飛行や台風による落雷で分解・墜落するところなどが上手く撮られている。

監督の阿部豊の作風は、日活で井上梅次、舛田利雄らの明快でダイナミックな娯楽映画に受け継がれたと思う。
フィルム・センター

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