『続・拝啓天皇陛下様』

1964年に松竹で作られた渥美清主演の喜劇。監督野村芳太郎、脚本多賀祥介・山田洋次・野村芳太郎。

丸山真男から野間宏に至るまで、インテリや左翼には強く嫌悪された軍隊に喜んで入営した奇特な男の話。彼にとっては、天皇陛下は神であり、住居があり、三食がただで食べられる軍隊は天国なのである。

渥美は、岡山の極貧の生まれで、「うんこ屋」、つまり汚わい車を引いてし尿を取ることを生業としている。徴兵検査から現役兵で入隊し、軍用犬の係を命じられる。

上官が藤山寛美で、渥美とのやり取りはさすがに上手い。除隊後はまた仕事に戻るが、昭和16年太平洋戦争の勃発で、再び徴兵されて中国に行く。

そこでは、民間から献納された軍用犬・弘幸の担当になる。

小隊ににはインテリの学徒動員の兵・勝呂誉もいて、彼は左翼らしく、「アカ」と言われたらしい台詞が聞こえなくなった。

弘幸は、京都の高貴な家の育ちらしく、字の書けない渥美に代わって勝呂が代筆して夫人に手紙を書くと、美味しそうな食べ物のお礼が来る。犬と渥美の触れ合いは最高で、多分日本映画史上最高の「犬映画」に違いない。

戦局は次第に悪化し、八路軍との戦闘で勝呂は死に、ついに8月15日の玉音放送になる。だが、「天皇がいる日本が負けるわけはない!」と信じない。

だが、その天皇が負けたと言ったのだと聞いてやっと納得する。そして、日本への帰還で、弘幸との別れ。

戦後、彼は、戦前に唯一の友人だった中国人の床屋小沢昭一・南田洋子夫妻と再会し、闇屋として生き、小沢は闇市にバラックの食堂やパチンコ屋を立てて儲ける。

渥美は、帰国するとすぐに京都に行き、元の飼い主だった久我美子と会い、彼女へ献身的な援助をする。ここは、後の『男はつらいよ』の原型ともいえる構図。もちろん、出征していた夫の佐田啓二が帰還してきて、渥美の恋は破れる。

闇たばこで小沢が沖縄に流されるなどがあるが、小沢は、南田の他に、日本人の妾・松井康子や愛人の三原葉子なども作るが、最後は松井の情夫の男にナイフで刺されて改心して、日本を去って南田とサイゴンに行く。渥美は、少し知恵遅れの女、宮城まり子と知り合い、彼女はパンパンから渥美と一緒になり、子供ができるが宮城は産褥で死んでしまう。

ここは、フェリーニの『道』のような、贖罪感、「われわれは、宮城のような人間を置き去りにして生きてきたんだなあ」という感じがあった。

ともかく、冒頭の憧れの女教師岩下志麻から、鬼軍曹の穂積隆信、隊長の浜村純、刑事の加藤嘉、さらに朝鮮に行く黒人兵のチコ・バルボン、産科医の高橋とよに至るまで、良い役者が目白押し。

今週は、続編で来年1月8日には、正編の方が放映されるとは面白い。

千葉テレビ

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