『生きているものはいないのか』

フィルムセンターの石井岳龍シリーズ、原作が前田司郎の戯曲なので見に行く。前田は何度か見ているが、若手劇作家の中では一番評価できる者である。

話は、大学の構内、神西学園となっているが、神戸学園らしく、非常にきれいで無機質な未来都市的な場所である。

そこでは、ある都市伝説が流布されていて、それは大学病院にあるはずのない地下3階があり、そこでは米軍からの寄託でウィルスが研究されているというもの。

それが次第に現実になり、次々と若い男女、学生や教授などが倒れて死んでゆく。

そんなバカなことがあるのか、言った男にも、「アメリカでも対抗策はできないのだよ・・・」と言われ、「アメリカもダメなのか!」という諦めで、倒れて死んでゆく。

きわめて単純な筋だが、2時間近い時間を最後まで退屈せずに持たせた前田の劇作術は確かだと思う。

前田のような若手がなぜこうした死への恐怖や恐れがあるのは不思議だが、あえて言えば阪神大震災や地下鉄サリン事件の存在だろうか。

私の知人の子供でも、阪神大震災の時の膨大な死体の群れで、一時的に睡眠障害になったものがいるそうだから、前田にも、そうした影響がどこかにあるのかもしれない。

フィルムセンター

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