昨日は、新人監督映画祭でのトークイベントの素材を作るために徹夜をした。
私は、基本的には徹夜をしない主義で、飲み会で夜を過ごしたというのはあるが、自分の作業で徹夜をしたのは、今回が初めて。
朝の6時過ぎだったので、見直しも死なずに会場に向い、そのまま上映すると、途中2回間違えがあり、さらに今村の『エロ事師たち』の大阪の情景を録画し忘れていた。
今回、素材を作るために見直したのは、小津安二郎の『戸田家の兄妹』で、これは戦前に唯一当たった小津安二郎作品なのである。
麹町の富豪の家では、母親の還暦の祝いが行われ、父親と子供たちが集まり記念写真が撮られ、宴会に行く。
庭園は、麹町ではなく、鎌倉の旧華族の庭園のように見える。
さて、その夜当主が戻ってくると、その夜に急死してしまい、実は負債があり、家を売却することになり、母親と三女の高峰三枝子は、長男をはじめ、兄弟の家をたらい回しされることになる。
その意味では、戦後の『東京物語』と同趣旨の映画だともいえる。
さて、この高峰三枝子と葛城文子に奉公しているのは女中の飯田蝶子であるが、彼女の歩き方が独特なのだ。
踵から下だけで歩いているような歩き方で、チョコチョコと歩くのだ。
歩き方や仕種、言葉使いは、戦前までは、階層、業種などでみな違ったもので、それは歌舞伎や新派ではまだ守られていると思う。
先日も、元新国劇の森さんからも、新国劇では徹底的にそうした階級別の仕種、言葉使いを仕込まれたそうだ。
さすが、小津安二郎だと思った。
話は、1周忌に天津から帰国した三男の佐分利信が事情を知って、3人と結婚する桑野通子を連れて、中国に行くことになる。
言わば、日中戦争以後の新体制の中で、それまでの自由主義経済を否定し、統制経済体制を肯定する意図があるように見え、かなり時局便乗的な作品である。