マキノ雅弘監督で、藤山寛美主演作品。
明治、大正時代に大阪で大人気だった落語家桂春団冶の生涯を描くもの。
元は、長谷川幸延の小説だが、寛美も演じている松竹新喜劇の十八番である。
脚本は、舘直志こと渋谷天外で、最後胃がんで春団冶が死ぬとき、人力車引きで先に死んだ親友の長門裕之が、死人の人力車を引いて寛美を迎えに来るシーがあり、シュールであるが、実はこれは新喜劇の劇にあるのだ。
シュールと言うより、アジア、アフリカ等では、死はしばしば生と連続的で、西欧的、キリスト教のように完全に分けられた世界ではない、と言うことだろう。
寛美の娘として藤山直美が出ているほか、流しの子供芸人として、その後女優としてテレビ等でかなり有名になる奈良富士子が出ていた。
春団冶で有名なのは、彼が膨大なSPレコードを残していることで、これは愛人等に金をつぎ込むため、盛んにレコードを吹き込んだという噂があるが、後世の我々にとっては先人の落語が聞けて良いことである。
フィルム・センターのマキノ特集。