『台所太平記』

久松静児の『南の島に雪が降る』に続き、東京映画のエース豊田四郎の『台所太平記』
原作は谷崎潤一郎、主人公の有名小説家は森繁久弥で、妻は淡島千景のコンビ。
戦後のすぐ京都での、古風な森光子に始まり、最後の現代っ子の中尾ミエまでの歴代女中の姿。

京都では森のほか、癲癇持ちの乙羽信子、巨体の京塚昌子などが次々の、山茶花究、フランキー堺、松村辰雄と見合いのような形で結婚して行く。
伊豆山に移ってからは、池内淳子、大空真弓、団令子など、次第に自己主張のある女になる。大空と団の、タクシー運転手の小沢昭一をめぐる三角関係が中心。
だが、団は大女優「ダコちゃん」(高峰秀子のことだろう)の付け人になってしまい、大空は小沢と、池内は旅館の番頭の三木のり平と結婚する。
極めつけは、現代っ子の中尾ミエで、さっさと女中をやめキャディーになってしまい、森繁夫妻は、時代の変化を実感する。

一番おかしいのは、文豪に憧れてきたという淡路恵子。
昔、昨年なくなった岸田今日子が、低音でひそひそ話をしていたが、あれはこの映画での淡路の台詞をまねたのではないか、と思うような不思議なしゃべり方だった。
森繁も何度も「気持ちが悪い」を連発する。

その他、水谷良重も出てくるが、こうした他社のスターを出せるのは、東京映画という東宝系ではあるが、一応独立プロダクションだった東京映画だから出来たこと。
当時は、5社協定があり、各社のスターは会社に強く拘束されていて、容易に他社に出られなかったからである。

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