『はだしの花嫁』

1962年、花嫁シリーズとしては末期の方の作品、監督は番匠義彰。
主演は倍賞千恵子、鰐淵晴子、早川保、山本豊三らに、佐野周二と月丘夢路、三井弘次らだが、電源開発の技師として寺島達雄が出ているのが珍しい。
寺島達郎は、菅原文太らと一緒に新東宝から松竹に来た二枚目で、比較的真面目な感じの役柄だった。
ここでは、倍賞と鰐淵の両者から惚れられる役回りを弱々しく演じているが、本当に巨人の長嶋茂雄によく似ている。
少しセリフに甘いところがあり、押しが弱くて個性に乏しく、松竹の後、東映のヤクザ映画でも脇役をやったが、あまりぱっとしなかった。
昨年なくなった児玉清のように、早めにテレビに転身すればよかったのかもしれない。
噂では、大部前に亡くなられているようだ。

話は、例によって大したものではなく、若者の恋の鞘当、佐野周二と月丘夢路の中年の恋愛をごく上品に描く内に無事1時間半が終わるというものである。
倍賞と早川の恋のみが解決されて、他のものは解決されないままだが、誰も文句を言わないのが娯楽映画の良さである。

瀬戸内海の内海航路が題材となっていて、東京の他、神戸、松山、別府の風景が出てくる。
この辺りは、当時はなかなか旅行に行けなかった日本国民への代概である。
去年、岡田則夫さんのSPレコードのイベントで、戦前の観光バスガイドのレコードが紹介された。
それらは、随分売れたものだったそうで、その理由は、当時国内も旅行に行けなかったので、その代わりだったとのこと。
今では、テレビの旅や物食い番組も、そうした役割を果たしている。
音楽はいつもの牧野由多可で、かなり洒落た曲が聞かれる。
衛星劇場

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