やっと桜が咲き出したが、桜が出てくる映画というと、意外にも少ない。
鈴木清順の『けんかえれじい』では、高橋英樹と浅野順子が夜桜の下を歩くが、青春の危うさ、一瞬の輝きを象徴していると思う。
私が好きなのは、川島雄三の『花影』で、池内淳子と池部良が青山墓地の満開の桜の下にいる。
さらに、自殺する池内が、唯一体の関係なしに惚れている佐野周二と会うシーンでも、桜が咲いている。
もう一つ、桜の映画と言えば、大佛次郎原作で、番匠良彰が監督した映画『花の咲く家』である。
これは、岡田茉莉子と佐田啓二のメロドラマだが、笠智衆の家に大きな桜があり、それを時代の流れで切って工場用地にしてしまう。
大佛の時代への妥協が表現されていると思う。
この場所は、鎌倉あたりで横浜でないのは残念だが。