寺内大吉死す

直木賞作家寺内大吉氏がなくなられた。88歳。
彼は、テレビのキックボクシングの解説者で有名だったが、映画の原作者としても面白い作品がある。

増村保造の傑作『セックス・チェック 第二の性』、さらに西村昭五郎の『競輪上人行上記』も大変面白いものだった。

『セックス・チェック』は、数年前にテレビで『仮面の女』としてリメイクされたので、見た人も多いだろう。
短距離のすごいスプリンター安田道代をヤクザなコーチ緒方拳が発掘するが、実は「ふたなり」(おとこおんな・両性具有者)で失格なので、緒方は安田と日夜セックスに励んで完全な女性にすると、今度は選手としては駄目になるという皮肉な話。
『競輪上人行上記』は、競輪にのめりこみ、ついには坊主姿の予想屋になってしまう男小沢昭一の物語。
後に、日活ロマンポルノで最多作を記録する西村昭五郎監督の監督デビュー作である。
これなど、寺の住職という職業が、社会の裏側や実相までも見る実体験を生かした作品だったと思う。
自ら言った「なまぐさ坊主」のご冥福をお祈りする。

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