『座頭市・関所破り』

朝、なんとなく見ていると宿場の老人役でひどくしわがれたのが出てきたので、驚いて戻してタイトルを見ると、伊井友三郎だった。

伊井は、新派の幹部俳優だった人で、渋いわき役である。その他、用心棒で富田仲次郎、悪代官が河野秋武、笠間の悪親分が上田吉二郎、最後に座頭市と対決する凄腕の用心棒が平幹二郎と良い役者がそろっている。座頭市のようなシリーズ映画は、結局のところ筋はいつも同じであり、要は他の役者の活かし方、面白さが重要になる。勝新太郎はよくわかっていたので、常に良い俳優を配しているが、中でもこれは悪くない。

監督は、大映のベテランの安田公義で、私は大きく評価している監督だった。

ある日、川崎の中央劇場に増村保造の『赤い天使』を見に行った時、偶然見たのが安田監督、安田道代、石立鉄男の『殺人者』で、「この監督はただものではない」と思ったのだ。太平洋美術学校出の彼は、美術の内藤昭によれば完璧なコンテ主義で、画面が非常に良いのが特徴である。

筋は、悪代官河野秋武と上田吉二郎が、高田美和の父で、年貢米の減免を願い出たある村の名主を、やくざの下っ端の千波丈太郎に殺させている。

千波の妹で、宿屋の女中は滝瑛子、最初は笠間の正月の祝いに来た連中に高いショ場代を取ることにした上田らの悪辣さと、中田ダイマル・ラケットらとのやり取りで笑わせる。

伊井友三郎の使い方も面白く、勝新や高田美和の側に立つかに見えて、最後は上田の力に負けて、高田らを裏切ってしまう、情けなさ。

最後は、もちろん座頭市が次から次へと悪を切って捨てて、新年の御来光を拝めるところでエンド。

ただ、この「関所破り」は羊頭狗肉で、関所に殴り込む程度のことである。

チャンネルNECO

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする