阿佐ヶ谷ラピュタの女優シリーズ、芦川いづみの数少ない主演作品の一つ、と言っても婚期を逃したOLが、結婚相談所で相手を紹介してもらうが、実はそこは売春斡旋所だったという苦い話。
原作円地文子、監督中平康、芦川の母親は浦辺粂子、芦川同様の美人の妹が山本陽子、ひねた弟は中尾彬。
怪しげな結婚相談所の所長は沢村貞子で、さすがに上手い。
売春がばれても、男を紹介することを沢村が「お見合い、お見合い」と言うのがおかしい。
芦川は、3人目に紹介された中年男松下達夫に亡くなった父の面影を見て、体を許してしまうが、勿論松下は既婚で、彼には買春に過ぎない。
初めて実態を知り、傷つき「見合い」をやめようとする芦川。
見合いを止める条件に、沢村から大富豪の細川ちか子の狂人の息子・菅野忠彦と寝ることを強要される。
女中が俳優座の女優の怖いお婆さんの岸輝子で、ここはホラーのようにとても上手く演出されている。
だが、芦川は彼の純真さに逆に感激してしまう。
取引先の知り合いの高橋昌也に、偶然に駅で再会し口説かれ相愛になり、芦川は結婚を決意する。
「結婚なんて他人に相談するものじゃない。自分で決めるものだ」と納得しプレイボーイの高橋に身を任せる。
だが、彼の自宅に行くと、彼は愛人だったバーのマダム稲野和子に無理心中されている。
すべてを悲観した芦川は、浜名湖のホテルで自殺しようとするが、昔の同僚横山道代に助けられる。
そして、元の会社の課長のさえない男高原駿雄と結婚することを暗示して映画は終わる。
全体に救いのない作品であり、この1965年頃はピンク映画の全盛時代で、5社も次第にセックス映画に手を出していた。
1965年11月の日活は、吉田喜重監督の近親相姦をテーマにした浅丘ルリ子主演の『水で書かれた物語』だった。
これは、『青い山脈』のようにセックスを明るく描いた石坂洋次郎唯一の暗い作品で、さんざ石坂作品を映画化してきた日活としては時代の変化として象徴的である。
これに救いがないのは、最後中年男との平凡な結婚を暗示する監督中平康の保守的思想、感性のためである。
大映の増村保造なら、セックスを武器として「女の自立」へと、若尾文子、渥美マリのようになりふり構わず進めただろう。
そこが、中平康の限界であり、増村との差である。
中平康は、秀才だったが、結局役者を信じられなかった人間のように思える。
そこが、彼の映画が、とても上手くできているが、どこか迫力が欠けていると思われる点である。
この作品の後、芦川いづみ主演の最高作『硝子のジョニー 野獣のように見えて』が上映されるが、2年前木村威夫特集で、ポレ・ポレ東中野で見ているので、見ずに戻る。
バスで、渋谷まで出たが、代々木八幡、神山は秋祭りだった。
やはり、芦川いづみは美しい。
コメント
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大昔に憧れの女優が芦川いづみさんだったことを思い出して企画上映の神保町に度々行きました 今回は 女流作家作品の映画化とか 期待して見たらなにそれ映画でした 芦川いづみほどの美人が相手がいないからと怪しい相談所に行くとは到底思えませんね 脇役はみなすごい面々だったが 話の作りが納得できない が感想でした 岸輝子さん細川ちかこさんはまりすぎる。