藤田泰子と言っても、知っている方はどれだけいるのだろうか。
私も鶴田浩二と共演した映画『エデンの海』でしか見たことはない。和泉雅子と高橋英樹が出た『エデンの海』ではなく、最初に作られた中村登監督の1950年の松竹映画の方である。
藤田は、兼高かおるに似た外人のような風貌の女優で、元はアーニーパイル劇場のダンサーだったのだそうだ。俳優としては台詞がかなりおかしく、比較的早く女優を辞めている。
どうしたのかなと思っていると、雑誌『レコードコレクター』誌の篠崎弘さんの連載「洋楽マン列伝」の水上喜吉由さんのインタビューの中に出ていた。
水上さんは、協同企画で故永島達司(ビートルズを呼んだ男)さんと知り合い、ご家族のことが書かれていて、奥さんが藤田泰子と言うのだ。
へえと思ったが、まことに美男美女のカップルだったと思う。
映画『エデンの海』は、非常に変な映画で、簡単に言えば先生(鶴田浩二)と生徒(藤田泰子)の愛は許されるか、という今更の作品である。
中村登の映画では、二人の愛を肯定していて、
「人間はエデンの園のように自由に愛し合えるはずだ」といっているのだが、これは勿論あり得ないことである。
人間が何の制約や規制もなしに自由に恋愛することはあり得ないのだから。