『動脈列島』

1975年、東京映画で増村保造が監督したサスペンス映画。
ほぼ同時期に、同じ新幹線もの映画として、東映の『新幹線大爆破』があり、増村ひいきの私とは言え、明らかに東映の方が面白いと思ったが、今度見てみると、増村作品も結構おもしろい。
作品としては、『動脈列島』は、新幹線を停めることで、逆に『新幹線大爆破』は停まらないようにすることで、国鉄を脅迫する。
これは映画的には、停まるのより停まらなくする方がはるかに面白いので、東映の方のアイディア勝ちなのだった。
そして、このノン・ストップというアイディアは、ハリウッドの『スピード』になる。
これについて、監督の佐藤純也は、むしろ誇りだと言っている。

『動脈列島』の面白さは、主人公の犯人の医者近藤正臣と検察のエリート田宮二郎の、カッコ良さ合戦にある。
少し冷静に見れば、歌舞伎的なやりすぎ芝居だが、それぞれが決まっていて実に面白い。
また、近藤に惚れる女として関根恵子と梶芽衣子がいて、これも美しくカッコいいのである。

田宮二郎、関根恵子、梶芽衣子と大映、日活の失業俳優、スタッフはカメラの原一民など、東宝からの出向組のようだ。
最後、ブルトーザーが動き出すところで、今年私の『鎌倉アカデミィア』についての「さかえるアート」のレクチャーのとき、お見えになった同校の卒業生で、東宝の俳優だった加藤茂雄さんが警官役で出ていた。
また、国鉄総裁が山村聡、検察庁長官が小沢栄太郎で、対照的な演技を見せる。
林光の抒情的で、悲しい音楽も良い
日本映画専門チャンネル

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