『雨ニモマケズ』

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1958年、新東宝系で配給された作品、猪俣勝人のシナリオ文芸協会で作られたもので、児童映画として、学校等で上映されたもの。

猪俣勝人は、右翼的反体制派だそうで、松竹の脚本家だったが、次第に松竹とは疎遠になり、自分でシナリオ文芸協会を作り、何本かの映画を作った。
1960年代以後は、日大芸術学部の教授として後任の映画人の養成に活躍されたのは有名だろう。

話は、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を忠実になぞったもの。
東北の貧しい農村の農学校教員の賢治は、子供に自分が作ったお話をしているが、最近は子供が来ない。
農作業で、それどころではないのだ。
貧困と過酷な農作業、農薬を使いたくても現金がない経済状況、ついには娘を町に出稼ぎに行かせなくてはならない現実が描かれる。
農本主義的現実批判である。
この農村の貧困と健康等の問題は、戦後の自民党政府の農村への経済的給付、健康保険制度、栄養等の食料事情の改善で全く鑑賞されたのである。
映画は、編集が粗雑で、台詞と口が合っていないのが気になる。

そして、待望の大雨が降る。
貧農の娘は、肺炎で死に掛かり、農民は雨から田を守るために、どちらの田の畦を切って水を落すかでケンカして争う。
大雨の中、賢治は村を奔走し、多分自分の病を悪化させているのだろう。
このシークエンスに、『雨ニモマケズ』がかぶされる。
まるで紙芝居だが、映画の本質でもある。
宮沢賢治役は、重森孝という人らしいが、永山則夫のような、朴訥な東北人の顔で、ぴったり。
衛星劇場

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