「これはどうかな、本当に面白いのかな」と思って見に行き、良かったときのうれしさはない。
この2本は、そんな佳作だった。
1964年の『血とダイヤモンド』は、日本的ハードボイルドの傑作で、日活の『拳銃は俺のパスポート』に匹敵する出来だった。
福田純がこんなに良い監督とは知らなかった。福田の映画は、何本も見ているが、多くはつまらないものばかりだった。
神戸港に輸入された3億円のダイヤモンドの原石を横取りしようとする悪者たちの争いで、誰もが相手を騙し、出し抜こうとし、筋の展開が読めず、最後まで面白かった。
老医者の志村喬ですら、メスで悪者連中を脅かしたりするのだから。
田崎潤を組長とするヤクザを裏切りダイヤを横取りするギャングが佐藤允、彼らに吸い付く探偵が宝田明、彼と組もうとするOLが水野久美、田崎の子分で伊藤久哉、警察が夏木陽介、内田朝雄、さらに誘拐される医者志村喬の娘に中川由紀など。
沢田駿吾の音楽も良く、日活の『拳銃は俺のパスポート』にも似た雰囲気がある。
『東海道篭脱け珍道中』は、北陸から江戸屋敷に、お世継ぎの若君を連れて行くため、彼を守る忠臣夏目俊二ら忠臣の活躍を描くもの。
彼らの他、渡辺篤史や安達国晴らの駕籠かきの雲助連中が協力する。
何かと複数の駕籠を使って若君のいる駕籠を分からなくするところが篭脱け道中なのだ。
さらに、こそ泥の三木のり平と岡っ引きの柳家金吾郎の追っかけのドタバタがあるが、実にタイミングが上手くて笑わされる。
時代劇のルーティンと言えばそれまでで、くだらないと言えばくだらないが、大変に楽しい。
こういう楽しさは、皆が芸達者だからできることで、今の芸なし芸人どもではできないだろう。
北川町子と環三千代の二人の美人女優が出ているのも嬉しい。
阿佐ヶ谷ラピュタ