1955年、松竹で作られた恋愛劇で、監督の小林正樹の性格を反映して比較的真面目な作品である。
中学時代の同級生、佐田啓二、木村功、織本順吉が、戦後社会の混乱と変化の中で、佐田はジャズ・ドラマー、木村は正義感の医者、織本は工場の労働者というよりも工員になっている。
松竹得意の三羽烏的発想である。
それぞれの恋人は、木村は、田村秋子の花屋の孫の久我美子、佐田は子連れの未亡人の小林トシ子、織本はまだいないが、木村の妹の野添ひとみが当てられている。
そこに、田村秋子を、自動車で跳ねそうになる会社社長の小沢栄太郎が、久我を気に入り、息子の佐竹明夫の嫁にしようとする話が絡むが、全体として実に他愛がない。
こうした他愛のなさが、松竹大船の本質で、山田洋次は、「落語のような軽さ、戯作者意識で、物事を真面目に考えたり、表現することは軽蔑されていた」と言っているが、そのとおりだろう。
そうした他愛なさは、1950年代末に崩れ、ヌーベルバークでも打開できず、渥美清と山田洋次が、『男はつらいよ』で、1970年代から1990年代まで、持ちこたえさせたのである。
小林トシ子の、薄幸で後ろ向きの生き方が面白い。
この時期までの日本の女性のある種の典型だと思う。
衛星劇場 小林正樹特集
コメント
ごめんなさい、
私やはり邦画はどうも肌に合いません。ごめんあそばさせ。