ピンボケ上映の神保町シアター

神保町の神保町シアターに行き、五所平之助監督の、戦後最初に公開されたと言われる映画『伊豆の娘たち』を見る。

戦時中の伊豆の大仁あたり、軍需工場の技師として佐分利信が赴任してきて、河村黎吉がやっている食堂の離れに下宿する。
そこには長女三浦光子がいて、すぐに好き合うが、河村の無神経さで、工場の部長笠智衆の娘との話を進めてしまい、一時は混乱するが、最後は無事二人は結ばれるという人情喜劇。
河村の妹で女医に桑野通子なども出てくる。
細かい心理描写がさすがに五所で、また河村が大変うまいので、実に面白く、一体戦時下の映画なのか、と思いたくなる。

作品には大変満足したが、神保町シアターの上映状態が最低だった。
最初から最後まで、全くのピンボケだった。
工場の行員として、高橋貞二らしき男が見えたが、それもぼんやりとしたまま。

終わった後、職員に言ったところ、「フィルムが古いので状態が悪くて」と弁解していたが、完全にそうではない。
16ミリによる上映だったが、台詞は極めて明瞭で、また画面が飛ぶということもなかった。
フィルムが傷んでいるときは、時々ピンボケになったりするものだが、今日は最初から最後まで一貫してボケていたのだから、原因は映写技師がピントを合わせなかったことであるはずだ。
こういう状態で、堂々と金を取ることは詐欺のごときものである。
全額とは言わないが、一部でも返金、割引すべきだと思った。

全く文句一つ言わないのだから、日本の映画の観客は、本当に大人しい。
それともボケて見えるのは、自分の目が悪いと思っているのだろうか。

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