監督の瀬川昌治が、自作の中でも「最も良くできた作品」として自慢していたので、「本当かな」と思い見る。
1985年なので、まだビート・たけしもひどく若い。
まだ、30代だった。
売れっ子で遊び人のトーク芸人ビート・たけしは、妻とは離婚し、10歳の一人息子がいいる。
勿論、息子の面倒は見ず、毎夜六本木などを遊び歩いている。
時はまさにディスコ全盛時代で、天井で回転するボーダー・ライトが懐かしい。
若手タレント中井貴恵が恋人だが、曖昧な関係を続けている。
あるとき、息子が脳腫瘍で、余命いくばくもないことが告げられる。
息子はたけしと正反対に大変真面目で、クラシック音楽の大ファンで、校内の親子コーラスの指揮もしている。
先生の菅井きんさんが大変元気で笑わせてくれる。
いくつかの医者に見せるが、結局手術は無理で、いかに残された期間を生きるかになってしまう。
テレビ番組の親子コーラス大会の場面があり、遊園地のようなところやっているので、ディズニーランドだと思ったら、出場校は大船の学校なので、戸塚にあった横浜ドリームランドと分かる。
在りし日のドリームランドの姿である。
さらに、テレビのクイズ番組にもいやいや出るが、1等は原田大二郎親子で、その懸賞の母親のいるシドニー行きはふいになってしまう。
最後、仕方なくたけしは、事務所の社長石倉三郎が持ってきた、ヤクザ興行会社に1年間の地方興行を売ることを承諾し、その金でシドニーに行く。
すると大谷直子は、いい男と結婚式を挙げるところだった。
タイトルには出ていないが、相手は実際に結婚した清水紘冶。
その後、たけしは、息子に「父親はやめた、これからは男の子同士で行こう」と宣言する。
飛行機の中で息子は死んでしまう。
おかげでそれが話題となり、地方興行は大ヒットし、自伝も悲劇の本になるという。
たけしは鏡の中の自分に向ってつぶやく
「結局、こんなものか」
この映画が優れているのは、ガキがそのまま大人になったたけしの姿を的確にとらえているところである。
また、この本質はださい人情話だが、表現がドライで、簡潔で、無駄な説明がないことで、こういうのは日本、特に松竹映画では大変珍しい。
この時期のたけしの歌は、完全にブルース・スプリングスティーンだが、非常にカッコよい。
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