NHKBSの山田洋次が選ぶ100本は、「なんで」という作品が多いが、これには驚いた。
こんなにいい映画だったのかと本当に驚いた。
監督は、福田晴一で、この人は松竹京都で主に娯楽時代劇を作っていた人だが、作り方がきちんとしているのには感心した。
話は、発明狂の伴淳三郎と、同じく中年の独り者の花菱アチャコにも召集令状が来て、二人は中隊に入営する。
解説の山本晋也は、「この頃、昭和20年6月は、誰でも召集していて、40でも50でも徴兵していた」と言っていたが、いくらなんでもそれは嘘で、徴兵年齢は、最後でも43歳だったが、当時の43と言うと、今の感じでは60歳くらいだろうか、ともかく相当な年であることは間違いない。
陸軍の内務班は、まさに非人間的で、暴力と非合理、そして要領の世界だったことが描かれる。
このあたりが、まさに庶民が見た軍隊というものだろう。
隊長の山路義人のいい加減さ、妻の幾野道子の目をかすめて愛人関千枝子の部屋に通うところ、アチャコが置き去りにして来た子供が連れてきた子犬が空襲で殺されるところは、いかにも笑いとお涙頂戴だが、それほど不愉快ではない。
伴淳トアチャコが上手いせいもあるが、それほど押し付けがましくないからである。
この辺の品の良さは、松竹的である。
この「二等兵シリーズ」は、大ヒットし、1955年から1960年まで10本も作られることになる。
その後、1963年に松竹京都撮影所が閉鎖され、森崎東や貞永方久等は大船に移籍するが、福田晴一は大船にはいかず、ピンク映画界に行き、かなり多くの作品を監督することになる。
NHKBSプレミアム