『嵐を呼ぶ男』(渡哲也版)

ビデオを整理していたら、昔録画したBSの『嵐を呼ぶ男』があった。

石原裕次郎主演のではなく、1966年の渡哲也主演のもので、その後1983年には同じ井上梅次監督の近藤真彦と坂口良子のものも東宝であった。

石原裕次郎版を監督した井上梅次は、香港でもリメークしており、その時は『青春鼓王』の題名だった。

渡哲也版では、井上梅次は原作となっていて、脚本は池上金男、監督は舛田利雄である。

要は、裕次郎のヒット作のリメークで渡哲也を売り出すための企画である。

裕次郎版にも弟の恋人で出た芦川いづみが、渡哲也の相手役で、北原三枝が非常にクールだったのに対して、芦川はここでは自然に演じていて良い。

渡の弟は、藤竜也で、前作では青山恭二で、クラシックの作曲家志望の青年で、クラシック信仰が嫌だったが、ここではカーレーサーになっている。

また、音楽的にも、はっきりとモダンジャズになっていて、踊子の殿岡ハツエに合せてドラムを叩くが、この辺のセンスも舛田は意外にも若々しい。

その自然さは、名作『紅の流れ星』での、ゴーゴークラブでのジェンカの踊りのシーンの上手さと同じである。

前作のドラム合戦もあり、敵役は笈田敏夫だったが、ここでは山田真二で、ドラムも前は白木秀雄と猪俣猛だったらしいいが、ここでは日野元彦のようだ。

また、渡・藤兄弟の母親は、山岡久乃で、前作では死んで出てこなかった画家の父親は、宇野重吉。

彼が、新宿二丁目のヌードスタジオで働いていると言うのが時代である。当時、新宿御苑近くの二丁目にはヌードスタジオが多数あった。

これは、写真スタジオという建前で、店に入るとカメラを持たされ、女性が裸を見せてくれて、その姿を撮影するという仕組みになっていた。

藤竜也の相手役は、由美かおるで、今とほとんど変わっていないのがやはり驚異。

最後は、藤竜也が新人カーレースで優勝するが、その場所は船橋にあったカーレース場だろうか。

舛田利雄は、「井上梅次の話がよくできているので、いいところはそのまま使った」と言っているが、舛田自身の上手さがよくわかる作品である。

また、裕次郎に比べて渡は、まじめでまた暗くて孤独感が強く、これは後に『無頼シリーズ』として生かされることになる。

やはりヒット映画を生むのは、その役者にあった役柄の企画であることがよくわかる。

NHKBS

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