『阿修羅判官』

1951年、大映で作られた大河内伝次郎主演の大岡越前もので、監督は森一生、共演は長谷川一夫、入江たか子、長谷川裕見子らである。
若き日の大岡越前の大河内伝次郎は、ヤクザの仲間にいて、情婦の入江たか子もいて、家からは見放されていた。

10年後、江戸南町奉行となった大岡越前は、もちろんきちんとした妻を迎えている。
長谷川一夫は、将軍徳川吉宗である。
その頃、江戸の町に5人組の盗賊団が暗躍する。
黒装束のうち、「2人の者の走り方が変だな」と思うと、それは盗賊になった入江たか子と長谷川裕見子の母娘で、勿論大岡越前の子である。
盗賊団が逮捕され、お白州で、入江たか子、長谷川裕見子母娘が、大岡越前の大河内伝次郎のお取り調べを受ける。
これって、泉鏡花原作の『滝の白糸』ですね。
溝口健二の映画『滝の白糸』で、水芸人で、殺人罪で捕まり、裁判長岡田時彦の裁きを受けるのも、入江たか子だった。
脚本は、新藤兼人なので、「時代劇で『滝の白糸』をやろう」との発想で作られたのかもしれない。
この時、長谷川一夫は、ほとんど撮影現場に来ず、また監督の森一生とは初めてだったらしいが、なぜか森は、長谷川のお気に召したらしく、この後、長谷川の当たり役の銭形平次シリーズの監督に何度も起用されることになる。
森一生の効率的で、しかも画面がきちんとしている撮影法に感心したのだと思う。
何しろ、森という人は、いわゆる「中抜き」撮影の際に、シーンを超えても出来たという人だったというのだから信じがたい。
チャンネルNECO

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする