『満点の桜』

民芸は、ときどき時代劇をするが、これも江戸時代の青森の話で、作者は青森在住で前に奈良岡朋子主演の『カミサマの恋』を書いた畑澤聖悟、演出は丹野郁弓。

江戸時代の初期で、津軽藩の藩主津軽信牧には徳川家康の養女満天姫・中地美佐子が嫁いでいた。

とわかるのは、二幕目に入ってからで、一幕目は満天姫に幼児からついて来た侍女頭の奈良岡朋子とその部下、さらに能天気な藩主等が出入りするので、人間関係が少々わかりにくく、一体この劇はどこに行くのかと思う。

二幕目になり、話は満天姫が最初に嫁いで生んだ姫の実子で、弘前に来てからは、藩の家老の養子となっている信教・神敏将が、福島家の再興を願い、江戸に行こうとしていることが大問題になっていることがわかる。

伊藤孝雄の僧天海が江戸から来て、信教を説得するが、彼はまったく聞き入れず、伊藤は奈良岡にいざという時はと、トリカブトを煎じた薬を渡す。

「ああ、これは先代萩だな」と思う。仙台萩ではなく、弘前桜か。

実子を殺さざるをえなくなる中地と、侍女頭の奈良岡の苦しみである。

そうやって見ていると、奈良岡朋子と中地美佐子の芝居は、ほとんど歌舞伎で、言って見れば新歌舞伎でやって見れば良いような劇だった。

奈良岡朋子は、実に上手い、本当に観客を泣かせる術を心得ている。

桜は、花びらが舞うだけで、一切見せないところがリアリズム劇の民芸らしいところだろう。

開幕前には、「公演中は帽子をお取り下さい」のアナウンスがあったのはさすがである。

三越劇場

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