1964年、松竹で作られた喜劇だが、ほとんど笑える場面はなく、ただただ愚かしいだけ。
こういう愚かしい映画を見ると、山田洋次喜劇のレベルの高さがよくわかる。
監督は堀内真直、脚本は椎名利雄、音楽は小杉太一郎という一流のスタッフ。
毎朝新聞社の記者園井啓介が主人公で、日本航空のエアー・ホステスの岩下志麻を取材したことから二人は結婚する。
その新婚家庭に、岩下が夜毎にするという寝言を聞こうと、彼女の誕生日に、園井が属する家庭部の記者がやって来る。
デスクの益田喜頓以下、高野真二、織田政雄、小坂一也、目方誠、さらに女性記者の楠侑子など。
小坂が興奮すると吃るとか、楠が分厚い度のメガネの文学少女であるなど、実に古臭い人間像の典型の連続。
織田は小心な係長だが、意外にも7人の子沢山、豪傑風の高野は、妻に逃げられた、ただがさつなだけの男。
豪邸に忍び込む間抜けな泥棒が、三井弘次と大泉晄で、トンチンカンなことをするというのも古いギャグの連続。
家で、高野らが大騒ぎし、歌を歌ったり踊ったりするが、中では益田喜頓のどじょう掬いと織田政雄が呻る品川甚句は芸を感じさせるのは流石。
どういう経緯か説明がないが、豪邸は岩下志麻のもので、園井啓介は、そこに居候しているような、今で言えば「逆タマ」的な結婚であったようだ。
ともかく、この映画の製作は城戸四郎で、こういう愚かしい喜劇が城戸のお気に入りだったと思うと、松竹の人々に同情する。
全体の感覚は、戦前というよりも、サイレント時代のものではないかとすら思えるからだ。
城戸四郎のセンスは、サイレント時代で終わっていたのではないだろうかと思った。
衛星劇場