『酔いどれ博士』

1966年、勝新太郎の『座頭市』『悪名』『兵隊やくざ』に次ぐ4本目の主演作として作られた作品。

脚本は新藤兼人、監督は三隅研次である。

大都市のスラム街に来た元医者の男の勝新が、最下層の町の人間と共に悪党と戦い、恵まれない人を助ける物語。

バーの女給の江波杏子が赤坂と言い東京を示唆しているが、ロケーション撮影は大阪の南港付近でされたようだ。

題名から見て、明らかに黒澤明の映画『酔いどれ天使』をヒントにしている。

ただ『酔いどれ天使』は傑作だが、この題名の天使とは、一体酔いどれ医者の志村喬なのか、最後は死んでしまうヤクザの三船敏郎なのか、不明である。

私は、若い頃に見て以来、天使は三船のことだと思ってきた。

だが、当初の黒澤と脚本の植草圭一郎の意図では、酔いどれ天使は、医者の志村なのである。

それほど三船のヤクザの印象が強烈だったということだが、やはりアルコールと結核に冒されて死ぬ三船も酔いどれ天使のように見えても良いのである。

さて、この『酔いどれ博士』では、女優はバーの女給の江波杏子、看護婦の小林哲子、チンピラの恋人林千鶴、さらに屑屋の都蝶々と多彩である。

だが、勝新に対抗するような男優が存在せず、その意味では黒澤の『酔いどれ天使』のような強いドラマがないのが欠点だろう。

だから、これも一応ヒットして続編も作られ、『酔いどれ波止場』というのも製作された。

さらに類似シリーズとして『喧嘩屋一代・どでかい奴』も作られ、ここでは藤田弓子とのコンビで面白かったが、その後は続かなヵった。

因みにチンピラの平泉征の恋人役の林千鶴は、現在は演劇集団円にいる高林由紀子であり、今も昔も美人だった。

日本映画専門チャンネル

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