『21歳の父』


ラピュタの武満徹音楽特集。
中村登監督の1965年の松竹作品、主演は21歳の父の山本圭だが、どうにも視点の定まらない奇妙な映画だった。

山本は大学生だが、盲目の娘倍賞千恵子と恋仲になり、家出し結婚してしまう。
父の山形勲は、広報社(電通か)重役で、長男の高橋幸冶は、日銀の社員というエリート家庭。
すごいのは、母親の風見章子がガンで死に掛かると、息子の山本圭可愛さに、彼が蒲田のパチンコ屋でアルバイトしていると聞き、パチンコ屋を買い取って経営させようと考えるところ。なんと山形はパチンコ屋の物件を探すのだ。
高橋と妻の岩崎加根子は、嫌味な夫婦で、身体障害者の倍賞との結婚には絶対に反対する。また、高橋が、荘子の言葉を引用して説教をたれるのも実に滑稽で不愉快だった。
今は、絶対にテレビで放映できない作品である。
倍賞は、子供と共に交通事故で死んでしまい、山本圭も後を追って自殺する。

結局、「この映画は、何にを言いたいのだ!」と言うことになる。
山本の友人で、大学教授の宮口精二の息子の勝呂誉こそ主役ではないか、ということになってしまう。
彼は、遊び人の適当な学生で、クラブは「殺陣研究会」にいて、テレビ局でアルバイトしている。
彼は言う。
「僕はいずれ堕落した人間になり、腹の出た市会議員くらいにはなるだろう」と恋仲の女子学生の鰐淵晴子に宣言する。
曽野綾子の原作がどうなのか、知らないが、なんとも変な作品だった。
曽野の小説は、読んだことがないが、こんなに嫌味な話なのだろうか、それとも中村登の脚本が良くないのだろうか。
武満の音楽も冴えず。

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