『ハルとナツ』

なんともNHK的な、生ぬるい作品だった。ブラジルに移民した日系人の労苦も、また戦後の「勝ち組」「負け組」の抗争も表面的な描き方だった。
配役で言えば、森光子と野際陽子が、ブラジルと北海道に分かれる2歳違いの姉妹となっているが、森と野際は13歳も年齢に差がある。少々無理だった。

ブラジル音楽に以前から強い関心があり、特に1950年代後半ボサ・ノバが生まれる直前の「プレ・ボサ」という時期のものに興味を持ってきた。
3年半前からは、カルチャー・センターでブラジル語も学んできた。

戦後の、勝ち組、負け組の紛争では、死者も出たし、またデマにより土地や全財産を失った人も沢山いた。そうした事実を全く描かないで、ブラジル移民万歳と言ったところで意味があるのだろうか。

また、このドラマに対してはブラジル在住の映画作家・岡村淳氏から盗作との異議が出ている。私は、岡村氏の作品を見ていないので、正否は分らないが、NHKが岡村氏のビデオを試写したことは事実なので、参考資料としてタイトルに載せるべきだろう。
NHKは、以前山崎豊子氏の大河ドラマ『二つの祖国』でも、ノンフィクション作家から盗作問題を指摘されていた。
歴史的事実を元にしてドラマを作る場合、何らかの資料に依拠することは当然で、それは堂々と表記すべきだ。
それが盗作か否かは、作品の出来で判断されるべきものである。

だが、私は、この種の問題を著作権問題とし、「日本では著作権の意識が低い」とする見方には大反対である。
黒澤プロが、同じNHKの大河ドラマ『武蔵』を『七人の侍』の盗作として訴えたが、間違いだと思う。詳細には見ていないが、あの程度の物語の類似では盗作とはいえない。勿論、鎌田敏夫の脚本にも問題はある。

『七人の侍』の類似では、1970年代のイタリア映画で『ドラゴン対アマゾネス』があり、これは完全に『七人の侍』の盗作だった。
ある貧村がアマゾネスの集団に襲われている。そこに傷ついたドラゴンがきて、彼の指揮でアマゾネスを無事撃退すると言うものだった。
これなど、完全ないただきだが、可愛くて許せるではないか。

私見を述べれば、既成の作品からその一部のアイデアを使って拡大し作品化したものは許容されるが、作品の中心や核心を貰って作品化したのは盗作なのではないか、と思う。
アメリカ映画『スピード』は、東映の『新幹線大爆破』のいただきだが、監督の佐藤純也は、「『新幹線大爆破』が評価されたわけで、許せる」そうである。
要は、元の作品への敬意のあるなしである。

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