『集金旅行』

先日、新宿のサザンシアターで、民芸の『集金旅行』を見た。

言うまでもなく、井伏鱒二の小説が原作で、1957年に松竹で岡田茉莉子と佐田啓二で映画化されているので、この頃の風俗小説だと思い込んでいた。

すると原作は、昭和10年で、それを戦後のものに変えたものだった。

劇は、その戦前に戻してあり、荻窪の下宿人だったカフェーの女給の樫山文枝と売れない小説家の西川明が、急死したアパートの所有者に代わって西日本に行き、未払いの下宿代を取り立てる話。

福山、岩国、下関、福岡と二人が行く、一種のロード・ムービー的作品であり、映画では『集金旅行』のリメークとして、前田陽一監督作品として『神様のくれた赤ん坊』も作られ、結構良い映画だった。

筋の展開は、各地ごとに意外な展開があり、非常に面白かった。

ここで感じるのは、カフェー、麻雀、洋酒など、戦前の昭和初期のモダニズムが東京にはあったが、地方にはまだ浸透しておらず、その格差の大きさである。

主人公の樫山文枝は、テレビ小説の『おはなはん』で大人気となり、それは『あまちゃん』の能年利奈どころではなかった。

彼女は、ルックス的には決して美人とは言えないが、声は非常に良い。

浪花節では、一声、二節、三啖呵と言われるが、芝居でも一番重要なのは声なので、その意味では彼女は得している。

新宿サザン・シアター

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