2001年のキャンプデ-ビットの米大統領別荘で、映画『真昼の決闘』をめぐってブッシュ大統領と小泉純一郎首相が大変意気投合した話は、有名である。
だが、昨日の神奈川新聞での、会談に同席した柳井元駐米大使の回想では、ブッシュは『真昼の決闘』を見ていなかったので、小泉首相が筋を説明したのだそうだ。
「そりゃそうでしょう」
あの映画は西部劇としては完全な異端であり、理屈の多い西部劇として、アメリカではほとんどヒットしなかったのだから。
日本では、高級な西部劇として高く評価されたので、小泉首相は、当然アメリカでも評価されていると思ったのだろう。
第一、ゲーリー・クーパーが演じた保安官は、メソジストの反暴力主義のグレース・ケリーと結婚したが、悪漢が町に戻ってきたために戦わざるを得なくなる。反暴力主義者(反戦主義)の苦悩の映画であり、暴力(戦争)肯定の作品ではない。
脚本は、赤狩りに引っかかった左翼のカール・フォアマンであり、そうした彼らの苦悩は描かれていても、カーボーイ的単純さとは全く対極の映画である。
小泉純一郎と言う人は、どこかトンチンカンで面白い人間である。
ブッシュは本当に驚いただろう。