横浜駅西口のビデオ屋に行くと、1983年のこの映画があった。当時、相当大々的に宣伝されていた。フィル・スペクター風の主題歌はカッコいいが、SFミュージカルにピーター・フォンダの主演、村上龍の原作・脚本・監督では、「大丈夫なの?村上先生」と予告編を見るたびに思ったものだが、予想どおり大ずっこけで直ぐに打ち切られ、見る機会がなかった。
撮影監督岡崎宏三さんは、「脚本を読んだときとてもユニークな娯楽作品になる」と期待したそうだ。彼は、アメリカ人俳優ピーター・フォンダのため、彼の出るシーン等は2キャメラ・システムで撮り、拘束時間超過のオーバーギャランティを出さずにしたが、製作者からはフィルムの使いすぎだと言われたそうだ。
話は、ダンスとバンドをやっている広田玲央名、渡辺裕之らの能天気な若者のところに異星人のピーターが突如落ちてきて(新宿西口のホテルのプール)、彼を狙うドアーズという悪人たち(首領が根津甚八、手下が岸部一徳、刈谷俊介ら)との追っかけとなるという他愛のないもの。
この程度の映画のためにサイパンロケに40日も行ったというのだから、キティ・フィルムは随分儲かっていたらしい。
作品の失敗は、勿論監督村上龍の脚本のひどさと演出力のなさにあり、特にミュージカル・シーンが凡庸で、少しも楽しくない。ミュージカルシーンの演出は本職の監督でも難しいのだから、素人の村上に上手くできるわけがない。
また、悪党団のSF的セットや衣装がきわめてチャチで、テレビの子供番組以下。ピーター君は、日本に来て、一体このひどい映画をどう感じたのだろうか、是非お聞きしてみたいところである。
昔、プロ野球の近鉄に来た某外人選手が近鉄の球場は、「爆弾が落ちた後みたい」と言ったが、そんな感想だろうか。
最後に、ピーターが悪人たちにロケットで打ち上げられる時、彼は「最後にマスターベーションをさせてくれ」と懇願し、ロケットに向け彼のロケットから液体を発射させる(勿論、見えないが)。すると人間の1000倍のパワーの彼から発射された液は、ロケットを破壊するが、このシーンが愉一笑えたシーンだった。
主演の広田玲央名ちゃんは、今で言う巨乳女優だが、現在はどうしているのだろうか。
日本の映画界が一番混乱していた1980年代の珍品の一つである。