『チャンバラ』

流山児祥事務所30周年記念の公演で、黒テントの作家で2010年に亡くなった山元清多と、昨年亡くなった斎藤晴彦の追悼公演で山元作の『チャンバラ』が行われた。
演出は、黒テントにいたこともある鄭義信で、テントからは服部吉次、木野本啓、結城座から結城孫三郎、コンにゃく座から井村タカオ、そして流山児祥事務所からは塩野谷正幸など。
話は、天保水滸伝の笹川繁蔵と飯岡助五郎との利根川河原での出入の後日談である。
元は1971年の公演で、私は見ていないが、当時黒テントは、多くの役者、スタッフがいて最盛期の1974年の『阿部定の犬』を作る前夜の作品であり、齋藤をはじめ多彩な役者が出たと思う。
今回の再演で窺えるのは、時代劇のチャンバラ、通俗劇的構造、ダンス、楽器演奏など、その後の黒テント、さらに斎藤憐の『上海バンスキング』につながる一種の「ごった煮路線」が、この辺ですでに確立していたらしいと言うことだ。
今回の公演がどこまで山元の原作に忠実なのかはよくわからないが、そうは変えていないようだ。
現在流行の「静かな演劇」がいかにつまらないものであるかを見せてくれただけでも、この公演の意義は大きい。
それに、こうした過去の作品を再上演するのは大賛成である。
なぜなら、歌舞伎には沢山の名作があるが、それらは再演することによって、多くの名人が工夫を加えて、そのたびに面白くなったものだからである。
名作は、再演の結果に出来上がるものなのである。
下北沢スズナリ

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