高橋治、死去

高橋治が死んだ、86歳。

訃報には、直木賞作家と付いていたが、言うまでもなく、彼は、松竹大船撮影所の監督だった。

大島渚、吉田喜重、篠田昌浩、田村孟らの松竹ヌーベルバーグの一人というよりも、兄貴的存在だったと思う。

彼は、入社は篠田と同期だったが、松竹の中で新しいことを起こそうと最初に考えた人間だったようだ。

それは彼が東大卒というエリート意識から来たものでもあった。以前、テレビで予告編についての特別番組があり、そこでのインタビューでは、かなり偉そうで、相当に不愉快な感じだった。

大島に遅れてすぐに監督デビュー作、小山明子主演の『彼女だけが知っている』を撮ったが、これはかなり硬質のサスペンス映画だった。

松竹時代の作品に特に目立ったものはなかったが、『七人の刑事・女を探せ』を見たくて、川崎の場末の映画館に行ったこともあるが、普通の作品でがっかりしたこともある。

その後は、俳優座との提携で海外ロケ作品も作った。

珍しいのでは、「白鳥事件」を題材とした戯曲も書き上演されたはずだが、これなどは親共産党的作品とも思われ、不思議である。

その後は、作家になり成功をおさめたのは、賢明というべきだろう。

彼の著作では、現在から見れば少々問題はあるが、『絢爛たる影絵』は、評価されるべきものである。

                 

私としては、彼の『東京暮色』への酷評は許しがたいが、小津安二郎を大きく取りあげたのは、多分日本では最初で、これは後世に残るものだと思う。

ご冥福をお祈りしたい。

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