戦前、戦後の日本の記録映画 『世界は恐怖する』ほか

川崎市民ミュージアムが所蔵する記録映画が上映された。
まず、亀井文夫の『小林一茶』、見るのは3度目だが、やはり画面の構成がきれいで、字幕、ナレーションのはさみ方のリズムが良い。

戦後編の最初は、1948年に作られた、秋元憲監督の広島についての2本、『平和祈念都市・ひろしま』は、戦後の広島の都市計画を主題としたものだが、平和公園、祈念塔とはともかくとして、労働者住宅、労働者大学、労働者の家など、労働者のオンパレードには時代だと思う。
『ひろしま・産業の再建』は、マツダの東洋工業他の企業の紹介で、マツダのオート三輪がすごい。
まるで、つい最近までのアジアの途上国のベチャの行列であるが、この辺から日本の自動車産業は始ったのである。
次の亀井文夫の『生きていてよかった』は、1956年の原水爆禁止世界大会を機に、原爆被害者の実態を記録したもので、亀井の本によれば、公開当時は大きな反響があったそうだ。この映画のナレーションは山田美津子だが、山田五十鈴である。

最後の『世界は恐怖する・死の灰の正体』は、亀井の作品には珍しく洋画系の配給会社の三映社から製作依頼されたものだとのこと。
大学の研究室等の映像で、金魚に放射線を当てて奇形を作る実験等が描かれる。
次第に本題に入り、原爆被害者の妊婦から生まれた小頭症で死亡した子の映像は、非常にショッキングである。
その直後に、放射能で汚染されている皇居前広場で抱き合う恋人たちの姿が挿入されるのは皮肉。
この作品のナレーションは徳川無声で、彼は反原爆論者で有名だった。
徳川無声といい、山田五十鈴といい、昔の芸能人には信念があった。
川崎市民ミュージアム

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