筋を聞いて、またユダヤ人による反ナチズム映画かと思って行ったが、非常に良かった。イギリス映画なので、きわめて公平に描かれている。
話は、主役のヘレン・ミレンのマリアの姉がロスで亡くなったところから始まる。姉妹は、オーストリア生まれで、ウィーンの裕福な家庭で育ち、父親は夕方にはチェロを弾くことを日課にしているという教養の高いユダヤ人家庭だった。そしてクリムトの名画『黄金のアデーレ』が家に飾られていて、その女性は彼女たちの叔母なのだった。ドイツでのナチスの台頭はオーストリアにも及び、ユダヤ人迫害も進行していくが、その中でマリアは、新進オペラ歌手と結婚する。
この式での音楽が興味深く、東欧のクレイズマーで、皆が手をつないで踊るもので、ギリシャやトルコ、アラブにも見られる輪踊りで、この辺は類似した音楽、舞踊があることがよくわかった。
叔父一家は、直ちに国外に逃亡するが、父親はウィーンにとどまる。
だが、次第にそれも無理なことが分かり、ついにマリアは両親に別れて、夫と国外に逃亡する。ここが第一のクライマックスだが、若い時代のマリアを演じるのが、タチアナ・マズラーで、大竹しのぶに似ているのがおかしい。
ナチはマリアの家にも来て、全財産を没収し、壁に掛けられていたクリムトの絵も持っていく。
そして、姉の遺言には、絵を戻してくれとあり、それをマリアが若い弁護士のシェーンベルグとするのだが、言うまでもなく彼は現代音楽の祖シェーンベルグの孫なのである。
いろいろな障害があるが、最後二人は裁判、そして調停に勝利し、名画を取り戻す。
これは実話だそうで、今はウィーンではなく、ニューヨークの美術館に展示されているそうだ。
近年にない面白い映画だった。二人がウィーンとロスを往復するのも上手くできている。
横浜シネマリン
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