滝澤英輔と中川信夫

土曜日の『酒豆忌』でのお話で面白かったのが、元TBSの飯島敏弘さんのテレビ映画『父子鷹』の製作の裏話だった。

テレビ初期の映画製作とのことで、飯島さんは、TBSから現場に映画製作の修業に行かされ、最初の監督が滝澤英輔だった。

そして次が、中川信夫監督で、両社の撮影方法の対照的なことに驚いたというのだ。

滝澤は、以前にも書いたことがあるが、「若草山の滝澤」と呼ばれて、「順撮り」で有名な監督だった。

日活で知り合った西河克己によれば、滝澤は、セットに来てからカット割りを考え、そしてシーンをシナリオ通りに撮影した。

西河によれば、「こんな非効率な撮影では松竹では到底監督にはなれない」と思ったそうだ。

言うまでもなく、映画は順番に撮影されるのではなく、役者の日程やスタジオなどの都合の良いところから撮影されるものである。中にはシーンやカットを飛ばして同じ方向のカットを続けて撮ってしまう「中抜き撮影」もあった。

マキノ正博の自慢話で有名だが、これは撮影日数が少ない上に、フィルムを無駄に使えない日本映画界の貧困から来たもので、私はそう自慢できる話ではないと思う。

西河によれば、順撮りは非効率的だが、作品には不思議な力があるそうで、評価できるとしている。

確かに、順撮りでは役者は、役の心理がよく理解できるので、演技が上手くできるのだ。

対して、中川信夫監督は、現場ではカット割りが全部できていて、効率的に撮影が進み、「本当の職人監督だ」と感心したそうだ。

だが、面白いことにこの二人の監督は、ともに京都のマキノ映画からキャリアを始めているのである。

要は、様々な技法があるということだろう。

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