劇団俳小公演『タルタロスの契り』

劇団俳小は歴史ある劇団で、前身の劇団俳優小劇場には、小沢昭一から西村晃、楠木佑子ら、研究生には風間杜夫、大竹まことまでいたと言えば、その大きさがわかるだろうか。

だが、演出家で指導者だった早野寿郎が亡くなれたこと等で体制が変わり、今は齊藤真さんを代表に、若手俳優や外部客演を加えて定期公演を行っている。

今回の作・演出は、『人は見た目が9割』の著書もある竹内一郎で、得意の賭博師ものなので期待していった。

               

芝居の運びは上手くて、齊藤さん(ラバ)、勝山了介(フクロウ)、さらに客演の旺なつき、河野正明、島英臣(共に俳優座)らの演技と役をきちんと見せた。

筋は、函館の雀荘で、1969年に画家で賭博好きのラバが、「五稜郭」という名の雀荘にきて、1947年に命を賭けて戦った、アイヌ出身のフクロウとの件を回想するもの。

やる博打は、いわゆる「手本引き」で、6枚の札を使い、親が出した点を子は当てるというものである。

映画界では、1964年の篠田正浩監督の『乾いた花』で見たものである。

脚本の馬場当は、競輪など博打好きだったらしいが、さすがに手本引きは知らず、撮影所の柿の木坂には、本物の博徒がきて所業を指導したとのことだ。

映画では、「入ります!」との台詞で、6枚の花札を懐に入れて、1枚だけを取り出して盆に置く。

だが、ここでは麻雀パイを片手で掴んで、後ろに隠したのち、1枚だけパイを持ってきて卓に置くのである。

そこで「入ります」というのは変だが、それはいいだろう。

旺なつきは、雀荘の女将で同時に売春宿も持っている女丈夫。

北海道大の教授で、博打好きの島英臣、雀荘の主人の河野正明も、好奇心で戦いに参加する。

だが、最後は勝山と齊藤の戦いになり、その中で二人とも戦争で死の直前までの過酷な体験をしていることも明かされる。

タルタロスとは、ギリシャ神話の奈落を背負った神だそうで、齊藤と勝木は、ともに奈落を背負っているわけだ。

この二人の他、旺、河野、島らが、若手とはレベルの違う演技を見せたのは、やはり何事も修練の差というべきだろうか。

近年、どの劇を見ても、若手役者には、役作りが存在せず、ただ自分を出しているだけの演技は、もうやめてもらいたいと思う。

それは、テレビやトークショーでやってくれればよいと思うのは、私だけだろうか。

池袋シアターグリーン・ボックスインボックス

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