『ヘンリー六世』

先週のことになるが、新国立劇場でシェークスピアの『ヘンリー六世』の第3部と第1部を見た。
勿論、第2部も見たかったのだが、日程が合わず、初めに第3部を見た後、第1部を見ることになった。でも、見て本当に良かった。
大袈裟に言えば、「日本のシェークスピア劇もここまで来たか」との感じだった。
特に第3部での、役者たちの頑張りが素晴らしかった。
渡辺徹と今井朋彦が力強い演技で最高だった。ヘンリー6世の浦井健冶も素直で驚く。そして、いつもギスギスした演技で嫌いだった中島朋子も解放されていて良かった。
やはり芝居は、全力で演じるのが感動的であり、平田オリザのような、手抜きの「現代口語芝居」など、精神衛生上も良くない。

話は、イギリス王位継承をめぐる、フランス王室まで巻き込んだ百年戦争で、対立、裏切り、敗北、勝利と筋書きがまず面白い。
まるで、『仁義なき戦い』だが、戦争とはそうした冷酷で打算のきわまるものだろう。
戯曲を読んだことがなかったが、こんなに面白いものとは知らなかった。その内、読んでみようと思う。
昔から、「シュエークスピアは、何もせず、そのままやるのが一番面白い」と言うのが、私の持論だが、その実例のような芝居だった。
演出の鵜山仁は、余計なことをほとんどせず、役者の演技だけで押してくる。それで良いのだ。言わば、旬の食材は、何もせず料理するのが一番のようなものだ。

第3部を見た3日後の火曜日に、第1部を見る。
勿論、構成上第1部は「筋売り」なので、第3部のような感動はないが、それでも十分な出来だった。
主人公のヘンリー六世の浦井健冶は、ここでも素直で自然な演技で好意が持てた。若手では最上位の部類だろう。
ソニンも出ていた。彼女は歌手だと思っていたが、なかなかの演技で驚く。
鵜山仁は、芸術監督がこれで終わりだが、最後にとても良い仕事をした。
昨年の「ギリシャ悲劇シリーズ」と言い、地味だがなかなか良かったと思う。
次の、宮田慶子は、どういう路線を出すのだろうか。
是非、鵜山仁から継承して欲しいのは、外国人演出家等の招聘である。
日本の文化・芸術で、一番「国際化」が遅れているのが、演劇なのだから。

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