『裏切りの暗黒街』

1968年、脚本石松愛弘、監督降旗康男のギャング映画、企画が俊藤浩二で、この時期はまだ東映でも東京を中心に活躍していたのだ。

鶴田浩二をリーダーとする水島道太郎、待田京介、山本麟一の4人組が、永井達郎の乗る外車を箱根の奥地に追い込み、車から現金5億円を奪うことに成功する。

                              

だが、途中でいきなり出てきたバイクのケン・サンダースを撥ねてしまい、そこから永井らは一味を探しはじめる。

永井のボスは、ヤクザの渡辺文雄で、麻薬取引のための現金を強奪されたもので、渡辺の上司は、政治家の柳泳次郎である。

この辺までの描き方はテンポもあり、描写も良いのは、石松の脚本の性だろう。

鶴田は、ケン・サンダースの姉でアナウンサーの香山美子と知り合い、性交にまで至るが、鶴田のベッドシーンは珍しい。

香山美子を見るのは久しぶりだが、この時期は非常にきれいだった。

話は当然のように、元麻薬中毒者の待田から足が付き、水島、そして山本も殺され、最後鶴田浩二は、渡辺のヤクザの会社に単身殴りこんで彼らを射殺し、自分も自殺する。

一人残されたケン・サンダースは、山本麟一の小屋にあった現金を手にするが、なぜか焼いてしまう。この理由はよくわからなかったが、結局こうしか終わらせられないのだろうと思う。

鶴田浩二が、手首を切って自殺するのは、後に「自衛隊事件」を起こす三島由紀夫を連想させるが、鶴田が一人でいい恰好をして自分の演技に酔っているように見える。

次の1本は、関川秀雄監督、梅宮辰夫、緑魔子の『かも』で、途中魚河岸のあんちゃんで緑を強姦する石橋蓮司、呉服屋の番頭で大原麗子に惚れる蜷川幸雄が出てくるところにきて、前に見たことを思い出す。

家に戻って調べると2009年のシネマヴェーラの緑魔子特集だった。

世界の蜷川先生には場内爆笑。大原麗子が、まだチンピラ女優で野暮ったい。

脚本は、成澤昌成で、彼は溝口健二の直弟子なので、この映画には、溝口の『浪華悲歌』の感じがあると思う。

阿佐ヶ谷ラピュタ

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