1939年、昭和14年に公開された東宝映画で、原節子が車のセールスマンを演じる。これを見ると、当時の昭和初期がモダン都市だったことがよく分かる作品である。
外車、ビアホール、郊外へのドライブなど西欧的な文化が続出してくる。
原節子の妹で、同じ会社の庶務に勤務することになるのは江波和子で、言うまでもなく江波杏子の母親で、この頃東宝の映画に出ていたが引退して結婚した。
最初、タイピストだった原は、自分が紹介した案件のコミッションを課長が多額に受け取っていたことから、「自分にも出来るのでは」と営業になる。
そこは当然、嫌がらせややっかみもあるが、彼女は順調に成績を伸ばしてゆく。
彼女の相手役は、東宝入社1回作品という立松晃で、互いに憎からず思っているが、なんと彼は江波和子と一緒になる。
仕事人間で、怖いような原は嫌だというのだが、それはそうだろう。
演出は自然で、画面構成もよく、テンポも心地よい、監督の伏水修は優秀で、名作『支那の夜』も監督するが、1942年に結核で若死にしてしまう。
この作品の時、原節子は19歳だが、実に堂々と演じていて、多分彼女はこういう積極的な女性を本当は演じたかったのではないかと思う。
伏水修は、原節子が唯一結婚したかった男性と言われているのも頷ける映画である。
原作は丹羽文雄で、戦後大映でも山本富士子主演で作られているそうだが、ぜひ見てみたい。
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