作品の著作権が村上春樹にあるのは当然だが、原稿の所有権が誰にあるかは、かなり微妙な問題だと思う。美術品でも、所有権と著作権は別ものである。
この記事を実際に読んでいないので、なんとも言えないが、原稿用紙は誰のものだったのか、会社あるいは編集者の安原顕が提供したものだったのか。
また、当時原稿はどのように扱われていたのか。
校了後は作者に返還したのか、会社が保存したのか、そうした実際の扱いも問題になるだろう。
作者との暗黙の了解で、作者は原稿の所有権を放棄していた実態があったとか。
いぜれにせよ、原稿は持っていても全く意味はなく、公に発表、出版も出来ず、ただ見て喜んでいるだけである。
漫画の弘兼憲史の事件では、中古店から作者に原画は返されたようだが、漫画と小説では原画・原稿の意味が根本的に違うだろう。
いずれにせよ、死後50年後には著作権は切れ、すべては所有者のものになるので、持っている者はじっと黙って持っていれば価値が出ることになる。
「横流し」したのが、安原顕というのもおかしい。晩年はガンで大変だったので、売り払ったのか。
彼なら、地獄で「何が悪い」と偽悪的に居直っているだろう。
作品は翻訳なので、彼は『俺の示唆で出来た」とも思っているのか。
地獄からメールは来ないのだろうか。
文壇の「お騒がせ男」だったが、死後も騒がせるとは、大したものと言うべきか。