『郷愁は夢のなかで』

「人生は一行のボードレールに如かない」と書いたのは芥川龍之介で、「人の命は地球より重い」と言ったのは、福田赳夫元首相だが、どのように平凡で無名の人の一生にも、どんな技巧を凝らした劇より複雑なドラマがあることが例証されるビデオ。
サンパウロ在住の映像作家岡村淳氏の作品で、再編集版の日本最初の上映。世田谷下高井戸シネマ。

2時間30分と長いが、様々な証言で主人公西政市(にし・せいいち)の一生が明かされる。
戦前、先にブラジルに行っていた叔父のまねきで鹿児島からブラジルに行く。
戦後、マットグロッソで大きなコーヒー農園を持つが、失敗し1980年に帰国する。
だが、兄弟とも上手く行かず、再びブラジルの戻る。
日本から持っていった金も騙し取られ、最後は隣人等の好意で1998年に養老院で死ぬ。

言わば最も失敗した移民事例で、いくらも反論はあろうが、私は大変興味深く、いろいろと考えさせる作品だった。

こういうドキュメンタリーを見ると、いいかげんな劇など見たくなくなる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 政市ではなく佐市だつた。
    主人公を西政市氏と書いたが、西佐市でした。訂正します。