鈴木清順の『殺しの烙印』が公開されたとき、社長の堀久作は、「こんな訳の分からない映画を作る監督はいらない。日活のイメージダウンになる」と言って鈴木を解雇した。これに対して共闘会議が作られ裁判になったのは、有名だろう。
だが、堀社長の怒りの真相は、もう少し別のところにあったのではないか。
『殺しの烙印』を見ると、宍戸らが嬉々として映画制作を本当に楽しんでいるように見える。
自分のものである映画会社の日活で、自分の命令と無関係な連中が自由にやっているように見えたのが多分不愉快だったのではないか。
勿論、それは日活のスタッフ、キャストが育っていることの結果だったが。
それを全く理解できなかった中小企業経営者の狭量さの典型である。