『闘争の広場』

左は三ツ矢歌子 右は沼田曜一

今回の新東宝特集で一番見たかったもの、1959年6月の新東宝大蔵時代なのに、日教組の勤評反対闘争をテーマにしているのだから。

大蔵貢の知らないことろで作られたのかと思っていたが、製作は大蔵貢である。

脚本は宮川一夫で、(企画も笠根壮介で宮川自身のこと)実際の実話を基にしていて、場所は千葉の外房のようだが、極貧の漁村。

主人公の教師沼田曜一が住んでいる家は、木造で当時の日本の住宅事情はこの程度だったのかと改めて驚く。

彼は、組合では穏健派だが、ちょうど校内の組合幹部が警察に逮捕されたところで、同僚の三ツ矢歌子と差し入れに行くが、二人は恋仲である。

女性の教師として池内淳子も出てくるが、彼女は夫が組合運動に批判的(教師ではないようだ)なので、争いのない別の小学校に転勤する。

この映画が大爆笑物なのは、組合運動反対の父兄同志会の連中で、リーダーの極貧の漁師の寅松が最高!

なぜか妻がいなくて、息子と暮らしていて、無知蒙昧そのもの。

菊池双三郎と言うらしいが、いかにも粗暴な男で、最後は処分撤回で「10割休暇闘争」、つまり休校の時に、同志会の連中とトラックで掛けっけて喧嘩になり、幹部の先生を机で殴って負傷させて逮捕されてしまう。

この作品で一番重要な役は、村一番の富豪で教育委員長の高田稔で、非常な好演である。

彼は、なぜか穏健派で、教育委員会と組合の双方の協調を常に求め、最後は和解の誓約書を結ばせる。

これは穿った見方をすれば、高田稔は大蔵貢自身のことであり、会社と組合は共に協調すべきだということかもしれないと見えた。

当時はまだ新東宝の組合も穏健で、会社と協調していた。

だが、大蔵が第二撮影所(元東京発声映画スタジオ)を勝手に自分の会社である富士映画に売るなど、あまりに横暴が過ぎたので、退陣を求めることになるのだが。

シネマヴェーラ渋谷

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