昭和29年、溝口健二の作品。
祇園を舞台としたもので、小品と言われているが、なかなか興味深い映画である。
ピアニストを目指し東京に行っていた祇園の御茶屋の一人娘久我美子が恋に破れ、自殺し母親の田中絹代のところに戻ってくる。
田中は、年下の医者大谷友右衛門を愛人にしていて、これが祇園の噂になっている、というのが題名の由来。
大谷が久我と出来てしまい、母子が対決し、田中は大谷捨てられる中で、倒れてしまう。
久我と田中は和解し、久我が店をついでいくことを示唆して終わる。
ここで、最も興味深いのは、久我、大谷の若者の描き方である。
小津安二郎の『東京暮色』での有馬稲子と田浦正巳の若者の描き方のおかしさに比べれば、遥かに溝口の方が現実に近いように見える。
音楽は黛敏郎で、電子音で不安な気分を出す。
この作品は、様々な点で溝口の遺作『赤線地帯』につながっている。