『裸体』が最高だった。

阿佐ヶ谷のラピュタで成沢昌成監督の『裸体』を見たが、これが最高の風俗映画だった。
原作は、永井荷風で『あじさい』あたりの短編だろう。監督の成沢が脚本も書いている。撮影川又昂、音楽武満徹。
主演は嵯峨美智子で、この頃すでに睡眠薬中毒で撮影は大変だったらしい。彼女に振り回された撮影ゴシップが有名だが、作品はとてもいい。

船橋の銭湯の三介(菅井一郎)と番台(浦辺粂子)の娘の嵯峨は、銀座の経理事務所に勤めているが、そこの所長千秋実の女になる。
そこから、不動産斡旋屋の職員(長門裕之)、さらに悪徳代議士(進藤英太郎)らの女になって行く。
勿論、千秋が最初ではなく、最初の男は船橋の川津祐介である。
最後は、夜になると巷に出てゆかざるを得ない女であることを自覚する。
まさに大人の映画。
インチキ・バレー教師(田中春夫)、下宿先の荒物屋の女将(浪速千枝子)らが絡む。にんじんくらぶ制作なので、宝みつ子なども出ている。

豊田四郎の『雁』や、田中絹代の『お吟さま』の脚本で成沢は、すごいと思っていたが、監督としても、主人公が最初に船橋の実家に戻ったとき、上がり口から二階までを横移動で撮ったり、最後佐々木功と新宿で会って互いに一目ぼれしたとき、そこを下から仰角でシネマスコープの端と端に入れたりなど、ケレン味もすごい。
こういう人が評価されず、数本の監督作品しかできなったのは、実に不思議である。

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