1953年の近代映画協会作品、製作吉村公三郎、脚本・監督は新藤兼人。
前に、テレビで見て、途中で退屈したが、こういう長い映画は映画館に缶詰めにされて見ると感じは異なり、最後は感動した。
佃島の靴屋の娘銀子の乙羽信子は、貧しさから芸者に売られて漁師の菅井一郎のものにされる。靴屋は宇野重吉、母は北林谷栄で、靴屋と言っても非差別部落民ではないようだ。
その町で乙羽は、医者の息子でインテリの沼田暘一と相思相愛となるが、沼田の家から認められず、さらに芸者に売られ、新潟に行ったりするが、最後東京の花街に戻ってくる。と、妹が訪ねて来て、家の窮状を訴え、彼女も肺結核らしい。
脚本の構成としては、一番やってはいけない「団子の串刺し」だが、乙羽の頑張りの他、山田五十鈴、細川ちか子、小夜福子、日高澄江、滝沢修、山内明などの名優が出ているので面白い。
パトロンの株屋の山村聰と花月園に遊びに行った乙羽は急性肺炎になり、自宅で死にたいと佃島に担架に乗せられてもどる。
すると妹は結核で危篤状態で、すぐに死んでしまう。「ヤキトリ、おいしかった」と乙羽から屋台で奢られた時の礼を言う。極貧の当時の人間の食生活はそんなものだったのだろう。
逆に乙羽は生き返り、また芸者として座敷に出る。
なんとも皮肉な筋書きだが、作者たちの芸者、人身売買制への批判が感じられる。
阿佐ヶ谷ラピュタ