雑誌「出版ニュース・1月上・中旬合併号」に三田先生の『文芸文化の未来に向けて』という驚くべき文章が載っている。
これが、なんと図書館を擁護する趣旨なのだ。一昨年に出した『図書館への私の提言』での図書館批判とは180度逆の論旨なのだ。こんな作家って信じられますか。まるで戦時中は鬼畜・米英を叫んでいた者が、戦後は親米に転向したようなものだ。世の中には、こういう人っているのですね。大変勉強になりました。
見出しだけを見ても、「図書館の充実を図るのが義務」「重要な図書館司書の役割」「国家基金による公共貸与件の確立」「副教材の活用と著作権教育」「インターネツトによる情報の提供」である。常に主張していた「著作権基本的人権説」もなければ、「公共貸与権」についての、法38条5項の映画の補償金制度が公貸権の先例だという岡本薫理論の引き写しもない。
最初に、「文芸文化の発展の基礎となるのは、図書館と教育機関である」と書かれている。
「図書館はただの貸本屋とは違う。国民の読書権を支えると同時に、日本の文芸文化を支えると言う重要な使命を持っている」のだそうで、そのためには「図書館予算の充実。司書の増員。さらに公共貸与権基金の国による設立が必要」なのだそうだ。
これでは、まるで誰かさんが一年中批判している図書館研究団体の言い分みたいだ。
しかし、これは大問題だと思う。彼には物事を自分で考え判断するという習慣がないらしい。いつも他人の受け売りにすぎないのだ。「読書権」なんて簡単に言っていいのだろうか。何を根拠に読書権などと言うのだろうか、全く不可解である。
いくら昨年1月の「現代の図書館」での私の『三つの疑問』の批判が強烈だったにせよ、こう簡単に態度を変えては作家としての資質を疑われるというものである。
なにしろ驚きである。今後もこの人の言うことは一切信じないことにする。