作家で日本文芸家協会常務理事の三田誠広氏が、近年著作権問題に関心を持ち、特に公共図書館を問題視されていることは、文学や著作権に関心のある方ならよくご存知であろう。
昨年、彼はそれをまとめて『図書館への私の提言』を出版された。これは、「これほど誤謬だらけの本はない」という歴史的著作であった。
そこで私は、昨年9月30日に彼にメールを出した。
質問は、
1 参照されたであろう文献や他説の紹介がないこと
2 「著作権・人権説」について
3 「消尽しない譲渡権」について であった。
2は、彼は「著作権は基本的人権である」としているが、これは完全な間違いで、少なくとも日本の著作権法は人権説で出来ていないではないか、と書いた。
3は、譲渡権、つまり所有者は所有物を譲渡する権利があるが、その場合すべての権利は被譲渡者に移転する。ところが、その例外として、権利が消尽しないこと(なくならないこと)を要求している非常識な人たちがいるのだ。
それは、テレビ・ゲームの製作者たちであって、14年4月に「ゲーム・ソフト販売事件最高裁判決」で、テレビ・ゲームの権利(頒布権)も第一譲渡(最初の販売)で消尽するから、中古販売は合法との判決がでた。それに対して、製作者等は「裁判で駄目なら、立法化してしまえ」として提案しているもので、三田先生も賛成らしいのである。これも世界の常識に反した非常識な見解だと書いた。この2、3について未練たらしい言い訳が書いてあったが、無駄なので紹介しない。
1については、「恐らく多数読まれたであろう他の著作者の文献や、様々な異説、意見の紹介がないのは、どうしたことでしょうか。これは、ややおおげさに言えば著作者人格権にかかわることではありませんか」と書いたところ、以下の回答があった。回答はいずれも10月2日。
1 参照されたであろう文献や他説の紹介がないこと。
不勉強で申し訳ありませんが、文献は参照していません。この3年間、文化庁の担当者、図書館関係者、学者の先生方に、さまざまなご指導をいただき、勉強させていただきました。文化庁から資料としてプリントをいただいたこともありますが、そのようなかたちで少しずつわたしの内部に形成された考えを述べたわけで、何かを参照したわけではありません。とはいえ、どなたかのご意見に賛同して、いつしかそれが自分の意見になっていることもあったかと思います。
なんともお粗末な顛末である。このどなたかのご意見が誰を意味しているかは、分かる人は分かるだろうが、ここでは書かない。
最後の、「どなたかのご意見に賛同して、」の件は、よく「盗作問題」が出たときの弁明としておなじみのものである。要は、この人はオリジナルは何もない、と告白しているのである。
その後、私は「三つの疑問」と題して雑誌『現代の図書館・平成16年1月号』(日本図書館協会)に、詳細に『図書館への私の提言』の問題点を書き、彼にもメールで原稿を送ったが今日まで何の回答もない。
因みに、「三つの疑問」での三つとは
1 図書館貸出被害の実証がないこと
2 著作権を基本的人権としていること
3 著作権法38条5項を「公共貸与権」の先例としていること である。
もし、興味のある方は、大きな図書館には同誌はあるので、ご参照いただければ誠に幸いです。