『チャーチル ノルマンディーの決断』

1944年6月、イギリス・アメリカ等の連合軍は、フランスのドイツからの解放のための上陸作戦の準備を迎えていたが、チャーチル首相はノルマンディーへの上陸に反対する。彼によれば、大規模な上陸作戦は危険が多く、膨大な数の兵士を失うのではないかというのだ。その代わりに、イタリアへの攻勢を強めて、背後からフランス解放をするとの考えだった。

アメリカの代表はアイゼンハワー将軍、イギリスはモントゴメリー将軍で、どちらもチャーチルの反対にはうんざりしている。その本心がよくわからないからで、それは見ている者もそうで、途中で理由が明かされるが、それは第一次世界大戦でのチャーチルが指揮した「ガリポリ作戦」の敗北だった。

ガリポリは、話題のトルコの断崖絶壁の海岸で、ここにイギリス軍は突撃して非常に苦しんだのである。日本で言えば、日露戦争の203高地のようなものだろう。もっとも、映画では触れられていないが、この作戦で活躍したのはイギリス軍ではなく、オーストラリア・ニュージーランド連合軍で、1980年代にはメル・ギブソン主演の『誓い・ガリポリ』と言うのが日本でも公開されている。ガリポリと言うのは、オーストラリア人にとっては、忘れられない英雄的な戦いなのである。映画の冒頭に海が赤く染まっているが、これはガリポリ戦のことだったのだ。

チャーチルに上陸作戦を納得させるため、ついに国王ジョージ6世が来て、チャーチルを説得し、これには頑固親父も従うことになり、D・デイが発動される。

そして、映画はここで終わりだが、翌年5月に連合国はドイツに勝利するが、7月のイギリスの総選挙では、チャーチルの保守党は、アトリーの労働党に敗れてしまう。

この辺はイギリス国民のリアリズムの凄いところで、戦争に勝利するための挙国一致内閣はチャーチルにやらせたが、勝利すれば、用なしとして撤退させてしまうのだ。

ポピュリズムの国なら、戦争に勝利した首相は圧倒的勝利になるだろうが。

黄金町シネマ・ジャック

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