1964年に公開された鈴木清順監督の『肉体の門』
見ていたと思っていたが、見ていなかった。私が見たと思っていたのは、ロマンポルノ時代の西村昭五郎のもので、舞台に横浜の中村川に架かる橋などが使われていたが、ここでは戦争直後の有楽町付近を大規模なセットで再現している。
ボルネオ・マヤの野川由美子が、有楽町を縄張りにしている松尾嘉代、石井富子、富永美沙子、河西郁子ら娼婦の仲間に入る。
闇市は、雑多な連中がいて、愚連隊の和田浩司らの上には米軍がいるが、ほとんど無法地帯で、皆が好き勝手なことをしている。
そこの元兵隊で強靭な肉体の伊吹新太郎の宍戸錠が現れ、全員が惚れ、ついには野川も体を許し、女たちのリンチに合う。全裸の野川が吊るされ、この時に「前張り」を最初に使ったという説があるが、本当だろうか。
女たちの住む廃ビルの造形が凄いが、後の鈴木清順の『殺しの烙印』の美術にも影響しているように思う。『殺しの烙印』は木村ではなく、川原である。
最後は、米軍の銃で宍戸は殺されてしまうが、途中で汚わい車を引いていた牛を黙って奪ってきて殺して食べるシーンがある。同時期に東宝の『女体』では、監督の恩地日出夫が、スタジオ内で本物の牛を撲殺してしまい大問題になったが、日活ではそれはなかったようだ。
国立映画アーカイブ
コメント
この映画で楽しみなのはたどたどしい台詞回しの関東小政ことおせん役の河西都子です。私も河西郁子と思ったいましたが、クレジットも河西都子となっていたと思います。両方を使い分けていたのかも知れません。堀川弘通監督の「おれについてこい」ではバレーボールのニチボー貝塚の左腕、宮本恵美子役を演じていたらしいです。「肉体の門」では竹刀で裸の野川由美子を右手でビシバシといたぶっていたのに、サウスポーの宮本をどう演じていたのでしょう。
『俺についてこい』は、昔シネマ・ジャックで見たので、宮本役だったかはよく憶えていませんが、撮影前に相当に訓練したようで、主役の白川由美以下、全員きちんと演じていたと思います。会場も駒沢の体育館を使っていました。
河西は、新藤兼人監督の『藪の中の黒猫』にも出ているようで、多分フリーの女優だったのだと思います。名前はよく分かりません。
河西都さんは、『俺について来い』で、東洋の魔女の役を演じていたということは、それにちなんだ芸名かもしれませんね。東京五輪の都と河西を合わせた。
それは面白い意見です。私は河西郁子と覚えていましたが、これだと正に東京オリンピックの女性アスリートをもじっています。女子バレーの河西昌枝と80メートル・ハードルの依田郁子です。たしか黒木和雄が君原健二に密着したドキュメンタリー「あるマラソンランナーの記録」で前年開催されたプレオリンピックの時に1位になった依田選手を見る事ができます。