わざわざオークションで買ったリチャード・レスター監督、ショーン・コネリー主演の映画『さらばキューバ』はとくに悪くはないが、いまいちだったので、久しぶりに増村保造監督、勝新太郎、大谷直子の大映末期の傑作『やくざ絶唱』を見た。やはり実に面白かった。
親は違うが、妾の子のヤクザの勝新とその妹の高校生大谷直子、そして勝新の情婦でバーの女の太地喜和子。
前半は、ほぼこの3人で話が進む。
勝新の大谷直子への、ほとんど近親相姦のような愛情の異常さ。
太地喜和子との三角関係など、芸達者な役者の演技がすごい。勝新と太地の白熱の演技は、まさに芝居の間の呼吸が最高である。
太地の「すべた」ぶりはものすごく、多分彼女の映画の演技でもベストだろう。
大地は言う、「茜ちゃんと夫婦になっても区役所の戸籍係は受け付けないよ!」
勝新は、大谷に近づく男はすべて暴力で排除するが、大谷はそれがわずらわしく、高校教師の川津祐介に処女をあげ、勝新らの本当の父親加藤嘉の養子田村正和ともできてしまう。
勝新は、大谷の行動に自暴自棄となり、太地のバーで暴れて逮捕された後、ヤクザ同志の出入りで射殺されてしまう。
大谷は田村と結ばれることを暗示する。
ともかく、筋の運びが全く論理的で、隙がなくテンポ良く運んで行く。
公開された当時の1970年は、大映はもう最後で、私が見た蓮沼の映画館もガラガラだったと思うが、今見ても全く古びていないものすごい作品である。
2時間ドラマで活躍中の平泉征が、対立する下っ端のヤクザで出演。